岡山大学工学部同窓会
 
企業〜大学における研究人生
−長いような短いような41年−

工学部生物機能工学科
地域共同研究センタ−
高島 征助

私は昭和37年 3月に大阪府立大学大学院 工学研究科(応用化学専攻)修士 過程を終了し、同年4月に(株)倉敷レイヨン(現, クラレ)に入社し,約1ヶ 月間の新人教育の後、同社の研究所(現在の中央研究所の前身)に配属された。

それから平成2年10月16日付けで岡山大学地域共同研究センター専任助教授 に任用されるまでの28年間,同社において有機合成化学,機器分析,人工臓器 などの開発研究の課題に従事してきた。今振り返ってみると,それぞれの課題毎 に様様な感慨がある。それらの中には,「万策尽きて,後は神頼み!!」と手を 合わせたこと,「どうにでもなれ!」と開き直ったこともあった。とくに昭和5 0年代初頭から従事した「エチレン/ヴィニルアルコール系共重合体の中空糸膜 型人工腎臓の抗血栓性の証明」にはほとほと手を焼いた。ここで工学系技術者に とって血液については全く無知なものであることを厭という程認識させられた。 また,昭和57〜60年にかけて我が国でも急に注目され始めたAIDS患者の血液 中のウィルスの吸着除去法の研究のために,昭和62年,約6週間にわたり Oxford大学ウィルス研究室に派遣されたことは貴重な体験であった。

そして,先述したように岡山大学に任用されたが,着任してみると研究用具はビー カー1つない有様。これから定年までの12年余を如何にして生きて行くか,と 茫然としたことがついこの間のことのように思い出される。しかし、周囲の方々 の援助によって,少しずつ実験装置も揃えることができた。センターの専用施設 も平成6年12月6日に開所式を挙行し、センターとして第1段階から第2段階 に入ったと実感したのもこの頃である。研究面でも工学部生物機能工学科の尾坂 明義教授のご厚意で共同研究者として生体素材工学研究室の学生諸君と一連の 「血液適合性セラミックによる難治性疾患の病因物質の吸着除去法の研究」を開 始することが出来た。これらの研究成果は国際バイオセラミックス学会において 一定の評価が得られるまでに至っており,私の研究生活の掉尾を飾るに相応しい 出来事として感謝している。

また,医学部中央手術部に設置された最も新しい滅菌器に関する「過酸化水素/ 低温プラズマ滅菌の作用機構に関する研究」は,現在,この分野で最も注目され るものの一つになったことは望外の幸せである。

さらに,現在,本学でも「医・歯・工」連携による研究機構の立ち上げ計画が進 行中である。そのなかで私がこれまで蓄積してきた機器分析の測定手段が,臨床 現場での極低濃度の病因物質の測定に有効であることが明らかになりつつある。 定年退職後も微力ではあるがお手伝いできそうであると内心喜んでいる。

このように私の研究経歴は,全く持ってバラバラである。これは企業の研究者と しての宿命であるし,私自身の「何でもやってやろう!」という野次馬根性によ るものでもある。しかし,その時その時を全力投球したつもりであり,そしてそ の時得られた普遍的な実験結果は,可能な限り報文として残してきた。それが私 の唯一の財産であると誇りに思う。 現在の我が国は目を覆うばかりの閉塞状態 にある。これを打破するには新しいスタイルの技術立国しか方法はない。そのた めには若者諸君の力が不可欠である。

このような重大な時期にも拘らず,私達の愛する岡山県では「晴れの国−岡山」 という甘ったるいキャッチフレーズが汎用されている。気候が温暖であることは そこに暮らす人々の健康を維持するために大変結構なことであるが,これだけで は新しい情報発信・技術で国内はもとより,世界制覇に向けての気概に程遠いと 憂慮するのは私一人ではないはずである。元々,岡山地方には機動性を旨とした 有名な「桃太郎伝説」が今も脈々と語り継がれている。この機動性を手本に,輝 かしい岡山の未来の構築のため,若者諸君の渾身の努力に期待するところ極めて 大である。

最後に,私の41年の研究生活を通して感じたことを基に,諸君には次の言葉を 送りたい。

「どのような小さなことでもよい。悔いを残さないために,その時その時の目標・ 研究課題に全力投球すること」。



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